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さて、今回はまあまあ専門的なお話です。
以前私が板金塗装に従事していた頃、塗装の劣化のメカニズムを知る際にまとめていた内容を改めて整理してお伝えします。
車の塗装が酸性雨によって劣化するプロセスは、単なる表面の溶解(エッチング)だけではありません。化学的な視点で見ると、塗膜を構成する高分子ポリマーの繋がりが、酸の作用やフリーラジカルによる連鎖反応によって破壊されていく現象を指します。
では、酸性雨が車に与える影響とそのメカニズムを、専門的な項目に分けて解説します。
酸性雨に含まれる硫酸イオン や硝酸イオンは、水分が蒸発して濃縮されることで強酸性へと変化します。これが塗装の最外層であるクリア層に触れると、加水分解反応が起こります。
⚪︎樹脂の分解:
現代の車に多いウレタン塗装などの安定した結合が、酸によって切断されます。
⚪︎クレーターの形成:
結合が切れた部分は構造的に弱くなり、塗膜が局所的に陥没して「ウォータースポット(エッチング跡)」を形成します。
この状態は多くのユーザーが雨染みと思い、ご自身で洗車の際に「ネット等で購入した酸性ケミカルを使っても落ちない・・・」とお困りでご相談いただくケースですが、これは塗装そのものの劣化なのでケミカルで落とせる状態ではありません。
▪️「加水分解反応とは、一言で言うと水が反応に関わることで、一つの物質が2つ以上の物質に分かれる反応のことです。」
ここからが、目に見えないミクロな劣化の本質です。酸性雨によるダメージは、日光(紫外線)と組み合わさることで加速します。
塗膜の分子結合が酸や紫外線によって切断されると、不対電子を持つ不安定な分子であるフリーラジカル が発生します。
⚪︎開始反応:
塗膜成分が紫外線のエネルギーを受け、ラジカルが発生。
⚪︎成長反応:
ラジカルが空気中の酸素と反応し、さらに周囲の正常な分子から水素を引き抜いて、新たなラジカルを生み出します。
⚪︎連鎖の拡大:
この反応がネズミ算式に広がり、塗膜全体の高分子結合が分断されていきます。
「フリーラジカルとは・・・化学的に非常に不安定で、他の物質から電子を奪い取ろうとする力が極めて強い分子や原子のことで、通常、分子の中の電子は2個1組で安定していますが、フリーラジカルは電子が1個足りない「不対電子」を持っています。
実は医学の世界でも共通の現象で人の細胞の老化と、ガンの発現や進行のプロセスも同じイメージです。

この不安定な状態を解消するために、隣にある健康な塗装分子から強引に電子を奪い取ります。 電子を奪われた分子は変質し、さらに別の分子を攻撃し始めるという「酸化の連鎖反応」を引き起こし劣化となります。」
通常、この劣化はゆっくり進みますが、酸性雨が存在すると、このラジカル生成を促進する触媒として働き、劣化のスピードを劇的に早めてしまいます。
▪️「触媒とは・・・化学反応の前後でそれ自体は変化せず、反応の速度を変化させる(通常は速める)物質を指します。」
化学結合が破壊された結果、塗装は以下のような状態に陥ります。
⚪︎チョーキング:
高分子鎖が断裂し、塗料に含まれる顔料が粉末状になって表面に浮き出てくる現象です。手で触ると白い粉がつくのは、結合エネルギーが失われた証拠です。
⚪︎光沢の消失:
表面が分子レベルで凹凸になる(平滑性を失う)ため、光が乱反射し、新車時の輝きが失われます。
⚪︎クラック:
分子鎖の切断により塗膜の柔軟性が失われ、硬く脆くなります。熱膨張や振動に耐えられなくなり、微細な亀裂が入ります。
酸性雨とフリーラジカルによる攻撃を防ぐ最も有効な防御策。
⚪︎物理的遮断:
強度と密度の高い硬化型コーティングで、酸性物質が直接クリア層に触れるのを防ぎ、主に劣化の起こりやすい上面を定期的なコーティングの補強を行い防御機能を維持する事です。
いわゆるコーティングで防御し洗車で健康な状態を維持する・・・これが秘訣。
最後になりますが、当時、再塗装を行い十分に硬化した塗装が夏の雨と日差しの元、わずか2月ぐらいの間に陥没して、その原因を探る過程で色々な専門書などを読んだり、当時の付き合いのあった塗料メーカー技術開発部の方などからの教えもあり学んだ話でした。
今でこそ、優秀なセラミックコーティングをはじめ対策もありますが、残念ですが絶対大丈夫という確証はありません。
それゆえに、当店が常に発信しているのは、コーティングのスペックを謳うのではなく、現実で必ず発生し対応する必要があることに対して重点的にお伝えしています。
早い話が、愛車を綺麗に保つ秘訣は「洗車」なのですね。
そしてコーティングは洗車を最も有利にする現在の塗装保護において最も効果のある製品です。
ただ・・・なんでも良いというわけではないので、コーティング選びの一番重要なポイントはお店選びで決まります!
今回は、文章ばかりの難しい内容でしたがお付き合いくださり感謝いたします。
